読書記録 夜の谷を行く
夜の谷を行く
感想
あさま山荘事件は昔のニュースとしてなんとなく知っていたけど詳しい内容は全く知らなかった。この本を読む前に、前知識があったほうが良いかと思い、ウィキペディアで軽く調べてみた。
…軽く調べただけで衝撃の連続。
自分の生まれる少し昔にこんな事件があったなんて。1970年代とは、どのような時代だったんだろう。両親が、若者だった時代。どんな思いで事件の経過を見守っていたのだろう。聞いたこともないけど、いつか聞いてみたい。
まず主人公は昔赤軍の末端として活動し、逮捕されたことがある女性。年老いてひっそりと、ささやかな暮らしを楽しんでいる。
過去のことは反省しているし忘れたい、けど自分の境遇のせいで常に孤独を感じていて、本当は自分を理解してくれる人を求めているのかな。と思った。
性格は、他罰的で言い訳がましく、無神経なところもあり、あまり好感的ではない、かな。。妹に対してもすぐ喧嘩になってしまう。でも喧嘩ができる間柄すら貴重で、その時が一番孤独から逃れられているのだろうな。
事件の描写は、直接的な表現は無いけどやっぱりエグい、ジワジワ恐怖を感じた。被害者が弱っていき、それでも救えない状況が、悲しい。
最終的にはフィクションらしい終わり方をしてすこしほっこりしたけど、実際、現在も過去を隠してひっそりと生きている老人は確かにいるはずで、それがすごいリアル。
過去の罪は消せないし、開き直られても困るんだけど、少しでも心安らかに暮らせているといいな。少なくとも周りの人間が無責任に責めたり、必要以上に恐れたり、そういうのは少し悲しいと思った。
桐野夏生の本はどれも面白そうなのでこれからまた別のを読んでみたいと思います。