azubanana’s blog

二児のアラサー母 育児に仕事に奮闘中

色彩を持たない田崎つくると、その巡礼の年

村上春樹の小説は現実と夢が入り混じったような不思議な世界観があって心地よい。

きっぱりはっきりしたストーリーではないし、明確なエンドを示さないので、モヤモヤが残るけど、その分余韻が残る。

 

田崎つくるには高校時代、4人の親友がいたけど、突然絶縁されてしまう。

そのことで死しか考えられず、ドン底にいたけどなんとか復活する。

でもそのことが深い傷となり、自分が空っぽの人間であるという思いを抱えてなんとか生きている。

恋人に言われ、かつての親友たちともう一度話すために地元名古屋に帰ることにする。そこでつくるは親友のひとり、シロがつくるにレイプされたと発言したせいで距離をおかれたこと、シロは何者かに殺されたと言うことを知る。

つくるは最後のひとり、クロの住むフィンランドに行くことにする。その直前、恋人の沙羅が他の男と歩いているのを目撃する。

フィンランドで、クロに会いシロの身に起きたことを聞く。そしてクロの抱える心の傷についても。

クロはつくるに、恋人を絶対に手に入れないといけないとアドバイスする。

つくるはこれまで欲しいものは苦労せず手に入ったし傍目から見ると順風満帆な人生に見えるけれど、初めて、沙羅をどうしても手に入れたいと強烈に思い、その気持ちを電話で伝えた。

沙羅の答えを聞くために会う約束をする。

ここで話が終わる。

 

・タイトルの「巡礼」は親友と過去の話をして過去に向き合うこと。つくるの時間は過去で止まっているから、今親友らがどんな人生を歩んでいるかを確かめることも、前に進むために必要だった。

・高校時代の男女の親友関係は、完璧に見えていても、きっといつか終わるもの。シロは敏感に感じとっていて、それに耐えられなかった?つくる自身の考察だけど、合っていると思う。実際に妊娠した、絞殺された、その犯人が誰かはきっとわからない。わからないからこそ、クロもつくるも、罪悪感が消えないのかもしれない。(村上春樹だから、ほんとに幽体離脱とか精神世界でつながってた的な可能性を考えながら読んだ。)

・数少ない友人灰田とその父親が体験した話はなんだったんだろう…。

・私も地元を出て暮らしているから、つくるの自分が空っぽに思える現象はすごく共感する。地元という土台を失って、かつての人間関係から切り離された?解放された?ことが胸の奥にはずっとある。自分が相手に与えられるものは何もないって思っちゃうんだよね…(帰ったら会える友達もいるけどね〜〜)